インド古典音楽のラーガを作るグルジの信念

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昨日、Ustad ザキール・フセイン氏主宰のグルプルニマのセレモニーがありました。

セレモニーでは何組かの古典音楽演奏がありましたが、兄弟子ビベックも演奏をしました。

グルジと一緒に少しだけ遅れていったので、何のラーガを演奏するのかは聞きそびれてしまいました。ザキールジとグルジが並んで最前列で聞いている前で、何を演奏するのかな?

と思って聞いていたのですが、全く聞いたことのないラーガ。

フレーズも全く分からなくて、「何これ?」と思いながら聞いていました。

結局最後まで分からずに終わってしまい、会が進んでしまったので、全てが終わって帰りの車の中でグルジに聞いてみました。

:「グルジ、ビベックの演奏したラーガ何?」

グルジ:「ハリプリヤだよ。」

:「聞いたことない…有名なラーガじゃないですよね?」

姉弟子:「グルジが作ったラーガなのよ。」

何も知らない無礼者な自分の態度にちょっと反省しましたが、

グルジの作ったラーガなら、兄弟子が演奏するのも納得。

グルジ:「ビベックは音階を拾って演奏していたけれど、ラーガの美しいフレーズが演奏できていなかったからね。このラーガは、美しいフレーズがいくつもあるんだよ。」

そうやって言いながら、いくつかのフレーズを歌って下さいました。

笛があればすぐに覚えられるのに、だいたいこういうチャンスは雑談の中で生まれます。

パーンを噛みながら小さい声で歌ってくれるグルジの声を、必死で聞きってメモメモ。

こういう時間が生徒の私にとって一番幸せです。

いつも突然、ラーガを作るグルジ

以前、遠征先のホテルで一緒にワインを頂いている時に、

グルジが突然「よし、ラーガを作ろう!」と言いました。

早朝コンサートを控えていたので、朝のラーガを作れと私に言ったグルジ。

と言っても、何をどうしたら新しいラーガが出来上がるのかさっぱり分からない私。

困っていると、すぐに歌いだしたグルジ。慌ててグルジの笛を借りて、グルジが歌ったフレーズを私が吹いて、メモをしました。

フレーズが天から降りてくるのだよ。

とグルジが言います。特に考えることもなく、本当に突然降ってきたようにラーガを作ります。

別の日、早朝コンサートに向かう車の中で急に黙ったグルジ。サウンドチェックで突然誰も聞いたことのないラーガを演奏して、そのまま本番に演奏しました。

本当にグルジはいつも、急に新しいラーガを閃いて、即演奏を始めます。

練習することもなく、コンサートで初演奏ということは珍しくありません。

もちろん、コンポジションも、舞台上で作りながら演奏です。

インド音楽はラーガの規則の中で即興演奏だと言いますが、ラーガも舞台上で急に作り出すグルジにとっては、舞台上で演奏する全てが即興です。

グルジはどうして新しいラーガを作り続けるのか

少し大きなコンサートの前になると

「新しい音楽を演奏しないといけない。」

とグルジが言い始めます。

慣れ親しんだお決まりのラーガではなくて、誰も聞いたことのないラーガを作り出そうとします。

グルジのレベルになると、ラーガは考えなくても降ってくるそうなのですが、それでも、常に新しい挑戦をしようとするグルジの決意はいつも変わりません。

もちろん、適当に演奏しているわけではなくて、今回のビベックの演奏でも、グルジがずっと昔に作ったラーガのフレーズが合わないだけですぐに気が付いていました。

私にプラバーテシュワリという、古いオリジナルラーガを下さった時にも、「伝統的なラーガではないから、好きに演奏して良いよ!」と言いながら、フレーズに夜の雰囲気が漂うとすぐに注意してくれました。

新しいラーガを生み出しながらも、昔作ったラーガも大切に演奏し続けていらっしゃいます。 プラバーテシュワリはラケーシュバイヤーの大好きなラーガ。

私たち生徒には、それぞれお気に入りのグルジのラーガがあります。

グルジのラーガの世界は広大過ぎて。私には、グルジが見ているラーガの世界がまだまだ全く見えないけれど。

せめて、グルジの元にラーガが降りてくる瞬間を出来るだけ目の当たりにしたいな。と、何時も思います。

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