先週のジャスラジの公演のこと、大好きだったグンデチャ・ブラザーズのラーマカントさんの突然の死、とても思うことが沢山あったのでグルジと2人の時に話してみました。
昨日、グルジは「ソサイエティ誌」から人生の功績を称えられて表を受けました。同時に表彰された方には、インドの発展に功績を残したビジネスマン、慈善活動家、有名な医師、トップモデル、俳優などがいて、インドで最も有名な俳優アミターブ・バッチャンもいました。
(普段は音楽関係者としかお会いする機会のない私は、各界のセレブリティにお会いできてとても楽しかったです。)
音楽家の寿命
同じ伝統芸能でも、古典舞踊などに比べて音楽家のアーティストとしての寿命はとても長いと思います。
しかし、声楽家はどうしても喉の衰えで声が出なくなってしまいます。私のグルジも、数年前から不調で演奏をキャンセルすることが何度かありました。
いつまで現役なのかの判断はとても難しいです。
私の友人のシタールの先生は92歳ですが、今でも現役ですし、本当に年齢は関係ありません。インド音楽家は、寿命の来る最後まで舞台に立ち続ける方も多く、ファンもそれを期待しています。
グルジがジャスラジについてどう考えているのかは公には話せませんが、お互いの音楽を尊重し合って、プライベートでも懇意にしていらっしゃるので、とても強い言葉でグルジの考えを話してくださいました。
現在のジャスラジは音楽シーズン以外の生活のベースをアメリカに移し、アメリカで生徒たちに指導を続けています。
たとえ声が出なくても、ジャスラジの音楽を求める人は無限にいますし、私自身も期待してしまいます。今でも人々に音楽の智慧を伝えて下さること、本当にありがたいです。
演奏が上手くできなくなってきたとき、どのように音楽人生を全うするのかはアーティストごとに考え方が違うと思いますが、半世紀以上インドの音楽界を背負ってきた方々の思いは胸に刺さります。
古典音楽の未来
グルジをはじめ、巨匠と呼ばれる音楽家の方たちと話していると、「良い時代だったんだな」と、その時代に生まれたことを羨ましく思います。
音楽的にも、今ほど西洋音楽の影響を受けていない純粋な古典音楽があったし、ゆっくりと一つのラーガを2時間近く演奏するような公演もありました。近年、特にムンバイではお客さんんも忙しいので、コンサート全体で2時間程度のものが多く、一曲ずつがとても短いです。
ムンバイの音楽シーンにいられるだけで幸せですが、どうしても昔の古典音楽に羨ましいなと思ってしまいます。
経済的にもとても難しくなっています。
ヨーロッパでもアメリカでも、政府が文化に費やす予算が年々減っています。
グルクルには海外から訪れる生徒がとても多くいますが、みんな口をそろえて、「どんどん厳しくなっている。」と言います。
収入の見通しが立たない外国人生徒と話している時に、グルジが言いました。
「ちゃんと時が来るから練習を続けなさい。」
「今は世界全体が資本主義に傾いて文化などに全く関心を示さなくなってしまっているけれど、それだだけでは人間は生きていけない。どれくらい時間がかかるかは分からないけれど、ちゃんと人々が音楽に目を向ける時代が回って来るから安心しなさい。」
ストレスの多い人間社会には音楽が絶対に必要だとグルジは信じています。
だから私たち生徒には信じて練習を続けるように話してくださいます。
私たちは、とにかく自分自身の音楽を磨き続けたいと決心しました。
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