インドは路上に沢山の動物がいることで知られています。
犬や牛が自由に歩いている姿を思い浮かべる人が多く、少し人混みを離れたところではサル、ラジャスタンなどではラクダを目にすることも多いです。
ムンバイは、インドでは珍しくノラ猫が非常に多い地域です。
海沿いの町ムンバイでは、ストリートの魚屋や、訪問で魚を売る人も多く、その周りにはいつも沢山の猫がいます。
そんな中で、ロックダウン中も沢山の猫の世話を焼く人に出会いました。
20匹の猫の集まる家
ロックダウン中のインド、その中でもムンバイは特に感染者の多い都市です。(現時点で2万人超え)
私の住んでいる地域はコロナの発祥数も多く、野菜を買うためにメインストリートに行きたくても、多くの道がバリケードで封鎖されてしまっているため、遠回りをしていかなくてはいけません。
そうして普段通らない道を歩いていると、まるで天使のように白い猫を発見。
カバンの中には偶然猫のチュールが入っていました。
何とか相手をして欲しくて後を追うと、一見の家の敷地に入ってしまいました。
「猫さーん」と呼びながらチュールを見せていると、家の方が出てきて、白い猫を呼んできてくれました。
白猫の名前はキットゥ。
そして、もう一匹出てきた、同じく毛の長い猫はジンジャー。
2匹とも本当に美しい猫。
こんな美しい猫が、ムンバイのストリートを歩いているなんて。
一人で猫を保護する女性
この家の女性は、20匹以上の猫を保護しているそうです。
ローカルな道端で英語で話しかけられたので驚きましたが、そこの女性は28年間香港で働いていた経験があるそうです。
流ちょうな英語と、中華料理のお話。女性がどんな人生を送ってきたのか想像もできませんが、言葉が分かることで一気に距離が縮まりました。
発情期には、猫どうしの喧嘩で怪我をする猫も多いです。
それらの負傷した猫は、政府系の病院に連れて行き、手術をした猫も多いそう。
しかし、ロックダウン中の今は、病院も閉まっていて治療ができません。
彼女が猫の面倒を見ていることは有名なので、バイクなどに挽かれた猫がいると、誰かが家の前に猫を置いていくそうです。女性はやせ細っていていますが、自分の食費を削っても、目の前の猫を助けてしまう性分。
今も、病院にいけないけど観察の必要な猫が2匹ケージの中にいました。
女性が家の中から出てくると、いつの間にか猫があちこちから出てきます。
ロックダウンなので人の家に入ることは避けたいのですが、1度だけ、お招きを受けて中に入れて頂きました。
とても小さな家に、ご主人や年老いたお母さん、2歳くらいの子供と、数匹の猫が昼寝をしていました、
奥には、生まれたばかりの子猫が3匹。
3匹の子猫を抱かせて頂きました。
すでに4回の出産を経験したお母さんは、ロックダウンが終わったら去勢手術を受けるそうです。
猫を保護する人の苦悩
私が週に1回か2回、野菜を買いに行くたびに顔を合わせるので、すっかりと女性と打ち解けました。
回数を重ねてお会いするたびに、会話の内容はお金のことばかりになりました。
ロックダウン中で仕事もない中、決して裕福でない家庭で20匹以上の猫の食事と薬を工面することは容易ではありません。
通常は、離れた地区にある肉屋の知り合いから猫用にチキンを手に入れるそうですが、今はそれもできず、ペットフードを買わなくてはいけません。彼女の買うペットフードは、7キロで1,400ルピー(約2000円)。
それは、インドのローカルの人にとっては、とても大金です。近所の商店で、人が食べるライスを買えば、7キロ買っても300ルピーくらい。自分の食事よりも何倍も高額なエサを与えています。
そんな状況で家の前では、別の猫が赤ちゃんを7匹生みました。
地元の人が捨てていく猫も増えています。
私は、そこまで全ての野良猫に責任を感じなくても良いのに…
と思いますが、本当に平等に愛を捧げてしまう性分なのでしょうね。
お会いするたびに泣き言が深刻になりながらも、猫の世話をやり切っています。
少しのサポート
いたたまれなくなった私は、わりと早い段階でアマゾンでキャットフードを購入したのですが、ロックダウン中なので配達までには10日間の予定。
届くまでにも、何度か足を運びましたが、その度にお金の苦悩を聞くのが。少しずつ辛くなりました。
私は、インドではお金の寄付が苦手。例えば、道端で子供が物乞いに来ても、この子たちにお金を渡したら、結局マフィアたちに大半が渡ります。それを続ければ、結局その文化が途絶えない。だから、出来るだけお金ではなく、お店があればパンや飲み物を買って渡します。(それでも彼らが根本的に救われるわけではないのですが)
だから、その女性にも物資を送ることがあっても、金銭的な関係にはなりたくなかったです。
幸い、アマゾンが予定よりも数日早く配達してくれたので、良かったのですが、こうやって支援をするほど、また猫が増えてより多くの支援が必要となる。
その繰り返しを考えると、あまり晴れ晴れしい気持ちにはなりませんでした。
少なくてもロックダウンが続き、彼らが通常のエサ(肉や魚)を安易に入手できるようになるまでは、少しずつの支援を続けようと思います。
猫たちは本当に可愛くて愛しい。
そんな猫が苦しんでいたら、手を差し伸べてあげたい。
それだけなのに、とても美しいことなのに、いつも不安を抱えている女性を思うと、いつもちょっと悲しくなってしまいます。
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