ヨガは心をコントロールするためのトレーニングでもありますが、私たちはヨガの実践を積んでいても思うように心がコントロールできない時があります。
力づくに、無理やり心をコントロールしようとしていませんか?
心は、無理やり抑えようとするほど、言うことを聞かなくなってしまいます。
プラティヤハーラ(制感)について考えてみましょう。
プラティヤハーラとは?
プラティヤハーラ(制感)とは、ヨガ・スートラの8支則の中で、5番目にくる実践方法です。
ヨガスートラの8支則は、下記の8つです。
- ヤマ(制戒):社会的な禁止事項
- ニヤマ(内制):自分に対する制御
- アーサナ(座法):安定的な座り方
- プラーナーヤーマ(調気法):呼吸でプラーナ(気)をコントロール
- プラティヤーハーラ(制感 ): 外界から受ける感覚を断つ。
- ダーラナ(凝念):意識を一点に集中。
- ディヤーナ(静慮 ):ダーラナで一点だった対象を広げる。
- サマーディ(三昧): 心が停止した状態。
この中で、プラティヤハーラは、ちょうど瞑想への入り口になります。
プラティヤハーラの状態とは、
- 心が対象に対する感覚に囚われなくなった状態
- 外からの刺激に、意識が向かなくなった状態
のことを意味しています。
一般的には、カメが甲羅の中に頭や手足を引っ込めてしまっている状態に例えられます。
外の世界でどのようなことが起こっていても、騒音があっても、暑すぎたり寒すぎても、もしくは、食べ物の匂いがしていても、それによって心が動かされないようになります。
瞑想を行うときには、徐々に意識を内側に向けていき、心の働きを沈めていきます。
もしも、心が外の世界に向いていては、心は激しく動かされてしまいます。
だからこそ、プラティヤハーラにより、外の世界と内側の心の関係性を弱めていきます。
プラティヤハーラは、マインドフルに感じることから
瞑想をするときに、「考えてはいけない」と思えば思うほど、思考の働きが活発になってしまいます。
もしくは、外で何か音が聞こえていたら、「気にしない!」と思えば思うほど、気になって仕方なくなりますね。
感覚器官・心の働きは無理やり押さえつけてしまうと逆効果です。
必ず、順番を追って、少しずつ沈めていきましょう。
- まず、自分の感覚が受け取っているものを充分に観察する
- 感じながらも、そこに意識を集中させ過ぎないようにする
- 感じているものを受け入れて、少しずつ手放していく
- 自然と、感じていても影響されない状態ができあがる
この中で、「受け入れること」は最も大切なプロセスです。
いったん観察して、受け入れることによって、はじめて執着を弱めることができます。
そのため、アーサナの練習でも、まずはアーサナを行っている時の感覚にできる限り意識を向ける練習から行います。
瞑想でも、未来のことや、外のことが気になって落ち着かないのは、自分自身の心の働きを理解せず、受け入れることができていないからです。
もしも沢山の思考が働いてしまうのならば、まずは、客観的に思考の動きを観察し、少しずつ距離をおいていきましょう。
そこにある、あるけれども、自分自身とは関係がない。
そのような状態を作ることによって、自分自身の感覚器官を少しづつコントロールできるようになります。
プラティヤハーラが見につくと、心が軽くなる
プラティヤハーラは、ふだん生活を行っている時にとても役に立ちます。
私たちは、予想外のことが起きた時に、心が一喜一憂してしまいます。
外の世界では沢山の情報があふれているので、それらを常に受け取ることによって、頭の中はいつもフル活動をしなくてはいけません。
しかし、プラティヤハーラによって感覚をコントロールできるようになると、必要以上に感情があれなくなります。
たとえ、情報を受け取っていたとしても、客観的に、自分の行うべき行動を考えることができるようになります。
「感情を捨てる」のとプラティヤハーラは違います。
楽しいときには穏やかに幸せを味わい、悲しいことが起きた時にも、動揺され過ぎないようになることです。
自分にとって必要な感情と、そうでない感情を見極めることによって、
本当に自分にとって大切なものだけを受け取ることができます。
穏やかで、充実した生活を送るために、受け入れることから始めるプラティヤハーラを実践してみて下さい。
解説ヨーガ・スートラ
コメント