インドでは現在でもプージャと呼ばれる宗教儀式が頻繁に行われます。
ヒンドゥー教の祭日はもちろん、誕生日や家を建てる時、結婚式や新しく車などを買った時など、あらゆる節目でプージャを行います。
プージャでは目的によってあらゆる神様に向けたマントラが唱えられますが、どのようなプージャでも1番最初にガネーシャ神に向けた祈りが行われます。
ガネーシャ神が最初に祈りの対象になった理由について、パンディット(司祭)が話して下さったのでご紹介します。
スカンダ神とガネーシャ神の兄弟神話
シヴァ神には象の頭部をもったガネーシャ神と、優れた身体能力を持つ軍神であるスカンダ神という息子がいます。
ある日、シヴァ神と妻のパールバティー女神はガネーシャとスカンダを呼んで言いました。
今から地球1周して来なさい。先に戻ってきた方に褒美をやろう。
するとスカンダは、乗り物である孔雀に乗ってすごいスピードで旅立ちました。
それに比べてガネーシャの乗り物は1匹のネズミです。
どう見ても軍配はスカンダにあると思われましたが、ガネーシャは落ち着いてシヴァ神とパールバティー女神の周りを1周して言いました。
私にとって、あなたこそがこの宇宙の全てです。だから私は尊敬するご両親様の周りを1周しました。
それを聞いた両親は、ガネーシャの知恵の深さに感激しました。
さすがのスピードを誇るスカンダ神であっても、地球1周と、目の前の2人の周りを1周するだけの時間では敵いません。見事にガネーシャは頭の良さでスカンダに勝利しました。
喜んだパールバティ女神は言いました。
あなたの持つ知恵の深さこそが、とても尊いものです。
そうして、人々が行う全ての祈りの儀式の最初に、ガネーシャに向けた祈りを行うことを定めました。現在でもインドではガネーシャ神に対する祈りの賛歌を必ず1番最初に唱えます。
ちょっとガネーシャ神、ずる賢い!
と思った方も多いと思いますが、トンチで自分の弱点をカバーできるのもガネーシャの魅力です。
知識こそが大切なもの
インドでは、金銀などの財宝以上に知恵こそが尊いものだと考えられています。確かにお金があれば何でも買えるように思うこともありますが、実際にはお金だけでは幸せになれません。
例えば宝くじで1億円を当てたとしても、豪邸を買ったり車を買ったり、世界中の豪華なホテルに泊まって豪遊すれば数年のうちに無くなってしまいます。その頃には、仕事を失い、周りにはお金目当ての人しか残っておらず、そういった人もお金が無くなれば離れて行ってしまいますね。
しかし、自分たちに知恵があり、知恵によって仕事をしてお金を得られるようになれば、間違ったお金の使い方をしませんし、誰かのためにと大きな寄付をしても、また自分でお金を生み出すことができます。
あらゆる物質よりも、知恵こそが大切であると考え、その知恵を与えてくれるガネーシャ神は、私たちの人生を幸福に導いてくれる存在だと信じられています。
ガネーシャ神の愛くるしい姿は、その姿で人々に知恵を与えてくれると考えられています。
ガネーシャ神のシンボルについては別記事でご紹介したので、ぜひそちらもご覧ください。
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